美味しい時間

「うん? 今日は一人で家に篭ってるんじゃないかと思ってね。こんな良い
 天気なのに、そんなのもったいないでしょ!」

あぁ……、そうか。
今日は課長と倉橋さんのお見合いの日。私が落ち込んでると思って、美和先輩
なりに気を使ってくれたんだ。
でも、明け方から美和先輩に起こされるまでぐっすり寝ていたからか、今の今ま
でそのことは忘れてしまっていた。
逆に現実を思い出してしまい、一瞬家に帰りたくなってしまう。でも思い直して
先輩に笑顔を向けた。

「ありがとうございます。そうですよね、パーっと楽しいことしてたほうが、
 気が紛れますよね」

美和先輩の気持ちが嬉しい。今はその気持を大切にして、今日は楽しい一日に
しよう。

「さっき百花を待ってる間に❍❍ホテルのレストランにダメ元で電話したら、
 ランチバイキングの予約に偶然2名分キャンセルが出たから、今からでも
 座れるって。好きなだけ食べていいからね」

❍❍ホテルのランチバイキングと言えば、一ヶ月以上前に予約の電話をしても
いっぱいの時があるほどの人気だ。一度は行ってみたいなぁと思ってはいたけ
れど、なかなかそのチャンスに恵まれなかった。
美和先輩の手をギュッと握ると、これでもかっていうくらいの笑顔をしてお礼を
気持ちを伝えた。
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