美味しい時間

あまりにも分かりやすい変化に首を傾げると、美和先輩が引きつった笑顔を作り
全く違う話をしだした。

「そ、それにしても、こ、ここの日本庭園の景色はいいよねぇ……」

「先輩? どうしちゃったんですか?」

挙動不審なその態度をしばらく見ていると、時々ある方向に視線を向けるのに
気づく。
その視線の先に何があるのか気になった私は、美和先輩が首を振ってそれを阻止
しようとするのを見て見ぬふりをして、ゆっくりと振り向いた。

「……っ……」

思わず息を呑む。
あり得ない、見たくない人たちが、だんだん近づいてきていた。
顔を背け俯くと、相変わらず遠慮のない甲高い声が上から降ってきた。

「あら~、若月さんと……」

俯いている私の顔を覗き込むように、腰を屈める。そして、フッと嫌味たっぷり
に笑うと、隣の男性の腕にもう一度自分の腕を絡ませた。

「藤野さんじゃないの。こんなところで待ちぶせかしら?」


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