美味しい時間
その言葉にカチンと来たのか、美和先輩が声を荒げる。
「はぁ!? 今さら待ち伏せなんかしてどうなるってんの。バカじゃない?」
「美和先輩……」
顔を上げ倉橋さんの顔を見ると、わなわなと引きつりながらも笑顔は崩していな
かった。小さく息を吐くともう一度きちんと2人に向き直った。否でももう一人
の顔が……東堂課長の顔が目に入ってしまう。
昨日の今日で、まさかお見合い当日に会ってしまうとは……。
さっきまでの幸せな気分はどこかへ行ってしまい、不幸のどん底に落とされたよ
うな気分だ。
今腕を組んで一緒にいるということは、お見合いはうまくいったのだろうか。
重たい気持ちのまま、なるべく課長とは目を合わせないように、目線を下げ気味
に話しだす。
「すみません。こちらのレストランでランチをしてたので……。偶然とは言え、
申し訳ありませんでした」
「ほ~んと、こんなおめでたい日にあなたには会いたくなかったわ。ねぇ、慶太
郎さん」
自然に寄り添う姿を見て、胸が締め付けられ酷く痛む。