美味しい時間

何で後部座席? と考える間もなく、課長も乗り込んできて荒っぽくドアを
閉めた。そして、あっという間に唇を奪われた。

「!?……んんっ……」

な、何? いきなりこんな激しいキス。久しぶりだから? 
違う。薄く目を開けて課長の顔を見てみると、今までに見たことのない表情を
している。なんか苦しそう?
余裕が無いながらも、そんな事を考えていると、今以上に唇が深く重なり、課長
の舌が無理やり入り込んできた。

「うっ……んっ……か、ちょう……」

抵抗しようと試みても、課長の力には勝てるわけもなくて……。
課長の柔らかい舌の感触に身体が震えた。舌を絡めとられキツく吸われると、頭
の中が真っ白になってきてしまった。身体の力が抜けていく。
く、苦しい……。
少しだけ顔をずらして重なった唇に隙間を開けると、ほんの僅かに空気が入って
きた。しかし安堵したのも束の間、両頬を掴まれたと思うと、温かい舌が歯列を
舐め、上顎や歯の裏側をなぞっていった。
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