美味しい時間

はい!? もう、言ってる意味が全くわかんないんですけどっ!!!
わざとらしく大きな溜息をつくと、赤信号で停まった課長が私の手をギュッと
握りしめた。

「だからっ。家に帰るんだって、俺の」

「俺の? って、何で課長の家に帰るんですか?」

「分かんない?」

そう言うと握っていた手を少し緩め、指の腹で掌をゆっくりと撫で始めた。その
動きがあまりにも官能的で、おもわず課長の手を力強く握ってしまう。

「感じちゃった? じゃあ、俺の家に帰ってもいいな」

「課長の……ばかっ」

無理やり手を離すと、真っ赤になっているだろう顔を両手で隠した。

「ばか……か。そうだよな、俺、馬鹿だったよ。今回のこともいろいろ話した
 いし、一緒に帰ろう。いいな?」

声は出さず、コクンと一度だけ頷いた。
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