美味しい時間
課長の家に行く途中、コンビニに寄ることになった。
「部屋に入ったら、朝までお前を離すつもりないから。食料なんにもないし、
調達しとかないとな」
さらっとそんな事を言って、またも私の顔を赤く染め上げたのは言うまでもな
い。
私を車に残し買い物を済ませると、課長が嬉しそうに戻ってくるのがサイド
ミラーに映った。課長は私に見られてるなんて思っていないんだろう。
この後、課長の家についてからのことを考えると、どうしても身体が緊張して
しまう。でも課長のあんなに嬉しそうな顔を見たら、そんな自分が馬鹿に見えて
きた。
そうだよね、大好きな課長なんだもん。緊張することなんて何もない。
そう悟ってしまえば、今度は身体が幸せな気持ちで満たされていく。思わず口
もとが綻んだ。
「何笑ってるの?」
「えっ?」
少し俯いていた顔を慌てて上げた。
「うわぁっ」
間近に課長の顔があって、変な声を発してしまった。
「そんなに驚くか?」
「だ、だって課長、近すぎ……」
「なぁ百花、ずっと気になってんだけださ」
「何をですか?」
「いつまで課長って呼ぶつもり?」
「あぁっ」