美味しい時間


「はい、どうぞ」

「お、お邪魔します」

玄関のドアを開けると課長は私の腰に手を当て、先に中へ入れと促した。その
まま押されて中へと入る。
課長の家には何度か来ているけれど、課長が私の家に来ることの方が多かった
から、何となく緊張してしまう。靴も脱がず玄関に立ち尽くしていると、背後で
ゆっくりと音を立ててドアが閉まった。その音に、自然と緊張が高まってしま
う。

「部屋、入らないの?」

「キャッ!!」

いきなり耳元に息がかかり、驚いて耳を左手で隠す。でもすぐにその手を取ら
れてしまい、今度は耳朶を甘く噛まれてしまう。思わず声が出そうになるのを
必死に堪えていると、柔らかい唇が首筋に落とされ強く吸い上げられた。

「あぁ、やぁ……っ」

我慢できずに声が漏れると、課長は満足そうに少しずつ場所を変え、何度も吸い
私の身体に赤い跡を残していく。

「百花は感じる場所がいっぱいあるな」

クルッと向きを変えられ、チュッと唇を吸われる。

「慶太郎さんが悪い……」

目を合わすのが恥ずかしくてそっぽを向くと、ククッと魂胆有り気に笑った。

「そっか、俺が悪いか。じゃあ今日は、もっと悪いことをお前の身体に教えて
 やる」

えぇぇぇー、それは遠慮しますっ!!!
という間も与えられず抱き抱えられると、そのまま浴室へと連れて行かれて
しまった。
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