美味しい時間

背中、首筋から身体全体にじんわりと温かさが広がっていき、思わず……。

「気持いい……」

心の声が出てしまった。慌てて口を噤む。

「だろ? もっと気持ちよくしてやる」

だ・か・らっ!
気持ちいいの意味が違うのよぉー。
恐る恐る振り向き課長の顔を見上げると……。
やっぱり……。
ニヤリと口角を上げて笑ってる。

「今日の慶太郎さん、ちょっと変態っぽい」

「変態でもなんでもいいよ。お前が欲しいんだ。でも、まずは顔を洗って」

どう見ても課長が使っているらしき、男性用の洗顔料を渡された。

「悪い、今はこれしかないからな。後でいろいろ買いに行こうな」

「うん」

課長のその言葉が嬉しい。
座り込んだまま洗顔料を握ってニヤニヤしていると、頭を軽く小突かれた。

「早く立てって。じゃないと、今すぐ襲うぞ」

「襲うって、慶太郎さんのいじわるっ」

それでも襲われるのは困るから、ゆっくりと立ち上がった。

「あんまり見ないでね」

「うん? それは無理かな」

楽しそうに笑うと私から洗顔料を取り上げ、泡を立て始めた。
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