美味しい時間
「ちょ、ちょっと抓っただけでしょ。そんな意地悪な顔しなくても……」
チラッと私の顔を見たかと思うと、何も言わず寝室に入っていった。
優しく下ろされると思っていたのに、放り投げられベッドが激しく軋む。軽く
巻かれていただけのバスタオルが身体からはらりと捲れた。
カーテンから光が漏れて、私の裸体をくっきりと照らし出す。
「わあぁっ」
あまり可愛くない素の声が出てしまったことと、まだ午前中の明るい部屋の中で
裸を晒している恥ずかしさから、慌ててバスタオルと巻き直そうと手を伸ば……
せなかった。
私の両手首をギュッと掴むと、そのままベッドに押し付ける。
「な、何?」
「バスタオル、必要ないだろ」
そう言って私に覆いかぶさると、ゆっくりと顔を近づけてきた。
課長の鼻が私の鼻に触れた。
「百花ごめん。今日は優しく出来ないかも」
「えっ、ちょ、ちょっと……」
いつものからかうような口調じゃなく、顔から笑みも消えていた。
課長も余裕がない?
首を傾げ課長を見つめる。
「覚悟しろよっ」
私が言葉を発する間もなく、唇が重なった。