美味しい時間

私の胸の感触を楽しむかのようにゆっくりと動かしていた手は、徐々に力を増
していき、胸に指が食い込むように揉みしだく。遊んでいた指先が先端を弄り、
ギュッと摘んだ。

「あんっ」

身体が痺れ、中心が疼く。
トロけるような口づけを続けていた唇は、知らない間に口元から頬をつたい、首
筋まで下りていた。チクリと痛むくらい吸っては、場所を変えまた吸う。鎖骨に
歯を立てられると身体がビクンと震えた。

「いやぁ……」

「百花って、この辺り感じるよな」

薄く閉じていた目をあけると、ニヤリと笑う課長と目が合った。熱を持った視線
が私を捉えたまま、鎖骨につうーっと舌を這わせる。恥ずかしさと気持ちよさが
混じり、強く目を瞑る。そんな私を見て可笑しそうにふっと笑うと、身体を離し
た。
温もりが離れたことに寂しくなり目をあけると、課長はお得意の意地悪な笑みを
浮かべて私を見下ろしていた。
な、なんか、嫌な予感がするんだけど……。

「はい、百花。足、自分で大きく開いて」

「ええぇ!? 無理ぃ~」

やっぱり……。課長のあの顔って危ないんだよね。で、一度言いだしたことは
何が何でもやり通す。
チラッともう一度課長の顔を見てみれば……。右の口角をあげて、腕組までして
待っていた。
こ、これは抵抗しても無駄?
諦めから大きく溜息をつくと、足の力をゆるゆると抜いていった。



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