美味しい時間

気持ちのいい疲労感と余韻に浸っていると、課長がふぅ~と息を吐き、身体を離
そうとした。

「ダメッ!!」

そう叫ぶと、自分から課長を抱きしめ押さえつける。
なぜそんなことをしたのか自分でも分からない。今の身体のどこからこれだけの
力が出るのかと、自分で自分に驚いてしまう。
何が起きたんだと言わんばかりの顔をしていた課長が、私の顔を見て苦笑すると
耳元で囁いた。

「寂しい?」

そっかぁ、私、課長と離れるのが寂しかったんだ……。
理由が分かると一度だけ小さく頷き、押さえつけていた腕の力を緩め甘えるよう
に抱きついた。

「まぁ、百花にそうされるのは嬉しいけどな」

そう言って、背中をなぞる。

「きゃっ!」

「ほんと今日の百花は敏感だなぁ。でも大丈夫。時間はまだまだあるからな。お
 前がダメって言ったって、何度でも抱いてやる」

「えぇっ!?」

それって、全然大丈夫じゃないんだけどっ!
本当にやりかねない課長の言葉に背筋が寒くなり、慌てて身体を離した。





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