美味しい時間
そんな私の心を知ってか知らずか、課長の長い腕が私をすっぽりと抱え込んだ。
背中から伝わってくる温もりに、フッと身体の緊張がほどけていく。
私の目の前で組まれている手に、自分の手を重ねた。その指を、甲を、愛しむよ
うに撫でていると、一本一本指を絡ませてきた。
「何? もう、したくなったとか?」
耳朶を甘噛し、首筋に舌を這わせた。
「うぅん……。ち、違う……」
「嘘つき」
絡ませていた指を離すと、左胸の先端をコリッと捏ねる。
まだ熱の冷めきっていない身体に電流が走り、背中が大きくのけ反った。
「ああっ!!」
「エッチなこと考えてただろ? 硬くなってる」
「か、考えてないっ。慶太郎さんのバカっ!」
「バカとか意地悪とか変態とか。ひどい言われようだな。俺、お前の上司だぞ」
「上司っ!? 今更? じゃあ言わせてもらいますけど、上司が部下にこんなこと
していいんですか?」
「いいに決まってるだろ」
鼻でフンっと笑うと、勝ち誇ったようにピースサインをしてみせる。
ほんとムカつくっ。勝手なんだから……。
でもそんな、勝手で意地悪でバカで変態な課長が大好きな私も、かなりの変人なのかも。
ひとりでクスっと笑っていると腕の中で反転され、課長と向き合った。