美味しい時間
2人の未来のTaste
大きくて優しい手が髪を梳きながら頭を撫でる。耳元がくすぐったい。
まだ夢の中にいるような、ぼんやりとした頭のまま、私は布団の中で身動ぎした。しばらくすると誰かが顔を覗きこむ気配がして、ゆっくりと目を開く。
「起こしたか」
目の前には愛する人が微笑んでいて、私もつられて目を細めて微笑んだ。
「よく寝てたな。お陰で可愛い寝顔が堪能できた」
あはぁ~、可愛い寝顔って言われた。嬉し……いっ!?
か、可愛い寝顔? 可愛い寝顔って言ったよね?
一気に目が覚め慌てて飛び起きると、課長は可笑しそうに肩を震わせた。
「大口開けて、よだれ垂らして寝てるんだもんなぁ」
「よだれ……」
顔を真っ赤にして、口元を隠す。
「大丈夫、きれいに舐めといてやった」
「バカ~っ」
掛け布団を引っ張って、頭まですっぽり隠す。
「うっそーっ!!! 俺もさっき起きたばっか」
嘘だとぉ~。それも、そんなキャラにない声出してっ!
怒りに震えた手で掛け布団を投げ捨てると、課長目掛けて飛びついた。
「おおっ!!」
不意をつく行動に驚きながらも大きな胸で私を抱きとめ、ベッドに倒れ込んだ。