美味しい時間
「本当に外食じゃなくてよかったのか?」
「うん、何か作りたい気分だから」
「でも身体、辛いだろ?」
「うぅっ……」
辛いだろ?……って、辛くしたのは課長でしょっ!!
顔を赤くしてむくれていると、いつもの笑い声。
笑い事じゃないっていうのっ!! こんなの毎回じゃ、身が持たないよ。
「そうやってからかってばかりだと、オムライス、作ってあげないからっ」
「ごめん、ごめん。でも身体が心配でさ」
ハンドルから左手を離し、太腿を擦る。
「ホントに心配してる?」
「信用ないなぁ~」
そう言ってる顔は、嬉しそうだ。
苦笑しながら太腿を擦る手に、自分の手を合わせる。動きが一瞬止まり、すぐに
指を絡め取られた。
晩ご飯を作る為に買い物に出かけた帰り道、車の中での会話はいつになく楽しく
て、握られた手はいつも以上に熱かった。