美味しい時間
眼の前にいるのは、あの課長だよ。
なんでドキドキしちゃってるの。
課長は課長で、何やらニヤニヤ笑ってるし……。
…………。
やめやめ、考えるのやめたっ。
どうせ答えなんて出ないんだし、こんなこと考えてると食事がまずくなりそうだ。
気付くとテーブルには、ところ狭しと食材が並んでいた。
課長が慣れた手つきで牛タンを焼き始める。
ささっと両面を炙り、「これぐらいが旨いんだよな」と言いながら、私の皿にそれを入れた。
「俺が焼いてやるから、いっぱい食べろよ」
「はいっ。いただきます」
レモンを絞って、牛タンをパクリッ……。
うひょ~っ!
こんなにジューシーな牛タン、生まれて初めて食べたよっ!
その味を幸せな気持ちで噛み締めていると、課長が私のことを微笑ましく見つめているのに気づく。