美味しい時間

「百花、旨いか?」

「ゴホッゴホッ……」

急いで水を飲む。
うぐぐ……。
急に百花って呼ばないでほしい。食べ物が喉に詰まりそうになったじゃない。

「課長、あんまり百花って呼ばないで下さい」

「嫌っ。って言うか、また課長って呼んでるけど?」

嫌って……。子供じゃないんだから。
だって課長のほうが言いやすいし……。

これじゃあ先が思いやられるよ……。

あぁぁーーーっ!!!
もう、どうしちゃったっていうの、私。
こんなのらしくないっ。
ねぇ私っ。百花って名前なんだから、百花って呼ばれたってどうってことないじゃないっ!!
慶太郎? 呼べばいいんでしょ、呼べばっ!!
ここは開き直って行くしかない。

「慶太郎さん。お肉じゃんじゃん焼いちゃって下さいっ!」

名前を呼ばれた課長は一瞬驚いたような顔をして、でもすぐに元の顔に戻ると、嬉しそうにお肉を焼きだした。
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