美味しい時間
「やっぱり、可愛いな」
「慶太郎さん。それ、どういう意味で言ってるんですか?」
「さぁ、どうでしょう~」
椅子に座ったまま手だけ伸ばし、私の頭をくしゃくしゃ撫でる。
「そのままでいろよ」
透きとおった瞳でまっすぐ見つめられながらそう言われ、少しだけ心臓がトクンと跳ねた。
食事を済ませ店を出ると、外は真っ暗になっていた。
3月に入り、春がそこまで近づいてきているとは言え、夜はまだまだ冷える。
手を擦り合わせ身体をぶるっと震わせると、「はい」と言って手を差し出された。
え? っと言わんばかりに顔を見ると、早く繋げと顎で指図をする。
少し迷っていると痺れを切らした課長が強引に私の手を握り、自分のコートのポケットにスッポリ入れてしまった。