美味しい時間

「ふわぁ~。眠い……」

大きな口を開けて欠伸をしながら、いつもより早く会社に着くと、珍しく課長が先に出勤していた。

「あっ……おはようございます」

欠伸してたの見られたかなぁ……。
こっちを振り返った課長と目が合ってしまった。

「おぅ、百花か。おはよう。早かったな」

「か、課長っ。ここ会社ですよっ」

「まだ誰も出勤してないんだからいいだろ」

課長がニヤッと笑う。
そういう問題じゃないと思うんだけど……。
でもこんなことで動揺してちゃダメだ。なるべく自然に振舞わなくちゃ。

「今日は早いんですね」

「朝一で営業と打ち合わせが入ってんだよ」

私に話しかけながらも、何やら資料を用意しているようだった。

「何か手伝いましょうか?」

「いや、もう終わるからいい。お茶くれるか」

「あっ、はい」

私は急いで給湯室に向かった。

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