美味しい時間

11時も少し過ぎた頃、経理課に用事があって席を立つ。と同時にポケットに入れていた携帯が震え、慌ててそれを取り出した。

『準備完了。第3会議室を俺個人で借りたから。12時過ぎたら来いよ』

課長……簡単に“来いよ”はないんじゃないですかっ!!。
お姉様たちは何とかなるかもしれないけれど、美和先輩が……。
お昼ごはん誘われたら、どうしよう。
振り返って課長を見たけれど、もう仕事に集中しているようだった。

「待ってるだけの課長はいいよね……」

小さな声で呟くと、美和先輩が面白そうに笑った。

「ねぇ百花。今日はずっと携帯気にしてるみたいだけど、何? 彼氏でも出来た?」

「か、彼氏なんていませんっ!」

思わず、フロア中に響き渡るような大きな声で叫んでしまった。

あちゃ~、恥ずかしい……。

顔を真っ赤に染めながら、みんなにペコペコ頭を下げると、またもや肩を震わせて笑っている課長の姿が目に入った。

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