美味しい時間

57……58……59……。
時計が12時を告げるメロディーを奏でた。

さぁ、これからどうする?

課長は15分くらい前に、

「しばらく席外す。何かあったら携帯に電話して」

と部下たちに言い残し、フロアから出ていった。
きっともう、第3会議室にいるんだろう。

いいよね、偉い人は……。
誰に詮索されることなく、簡単に席を外せて。
私が今、お弁当が入っている袋を持って何も言わず席を立てば、絶対誰かに声をかけられるはずだ。

この会社のお昼休みは、何時から何時までと決まっているわけじゃないから、あまり時間を気にすることはないんだけど、課長を長くまたせてしまうのは如何なものか……。

12時も10分をまわると、フロアにいる社員の数もかなり減ってきた。
課長がいないせいか、お姉様たちもさっさとフロアから出て行ってしまう。

危険人物、残るはあと一人。
目の前の席で仕事をしてる美和先輩。

「百花~。今日のお昼どうする?」

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