美味しい時間

キタァーッ!!!

ど、ど、どうしよう……。
ここで動揺する姿を見せるわけにもいかないし。

あっ、そうだっ!

「私ちょっと忘れ物取りに、一度家に戻ろうと思ってるんです」

「そうなんだ。百花、家近いもんね。じゃあ私、食堂行ってくるわ」

ひらひらと手を振り、フロアから出ていった。
ごめんなさい、先輩っ!!!
心の中で謝ると、机の下に隠してあった袋を掴み、急いでフロアを後にした。

第3会議室はひとつ上の階。エレベーターより人に会う確率が低い階段を、一気に駆け上がる。
踊り場からひょっこり顔だけ出して、誰かいないか確認。

よしっ、誰もいない!

廊下に飛び出ると、一番奥の会議室目指して猛ダッシュ!!!
会議室の前に着きハァハァと息を切らせていると、突然目の前の扉が開き、腕を掴まれ大きな胸へと抱き込まれてしまう。
扉が閉まり、ガチャっと鍵の掛かる音が聞こえた。



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