美味しい時間

会議室の無機質なパイプ椅子に座り、膝の上に袋を乗せると、
徐にお弁当を取り出す。そして、大きい方の包みを課長に渡した。

「お茶は俺が用意しておいた」

「ほいっ」とペットボトルのお茶を渡される。

「あ、ありがとうございます」

朝は何だか気持ちがいっぱいいっぱいで、そこまで頭回んなかったよ。
良かった、気づいてくれて。

課長が受け取ったお弁当の包みを、嬉しそうにほどいている。
今にも口笛を吹きそうな感じだ。
昨日の買い物の時も思ったけれど、二人でいる時の課長って子供みたい。
仕事中とのギャップが激しすぎ。

「おい、すっごいな。これ全部ひとりで作ったんだよな?」

「もちろんですよ。でも料理大好きですから」

蓋を開け手に持って眺めている。やっぱり子供だ。
クスッと笑うと、ジロッとこっちを睨む。

「何笑ってんだよ。食うぞ」

照れてるのか、頬が少し赤い。

「はい、どうぞ。私もいただきます」

ふたり微笑みながら、お弁当を食べ始めた。
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