美味しい時間
頬を包んでいる手が指だけ動かし、唇に触れて輪郭をなぞる。
自分のされてることが理解できず、ただ課長の顔を見つめることしかできない。
「お前そんな顔して、俺を煽ってる?」
ブルブルブルと勢い良く顔を振る。
煽るって何? そんな事、私ができるはずないじゃんっ!!
心臓がバクバクして、もうもちそうなない。何とかその腕から逃れようと、身体に力を入れた。でも課長の力は思った以上に強くて……。
「百花。俺に抱かれるの、そんなに嫌?」
耳元で熱く囁く声に、身体の芯まで熱くなる。
「い、嫌じゃないですけど……」
「けど?」
「わ、分かりませんっ!! どうせからかってるんでしょ?」
少しむっとしてそう言い、課長の胸に顔を埋める。
「お前が無意識にそういう可愛い反応をするから、からかいたくなるんだ」
そう言うと、いきなりブニュっと私の顔を両手で挟み込む。
「い、いひゃいれす……かひょう……」
首を振って、その手を振りほどこうと頑張ってみる。
びくともしない……。
「動くから痛いんだろ。じっとしろっ」
何で命令口調……ちょっと不服だったけれど、大人しく従った。