美味しい時間

ほぼ毎日課長とお弁当を食べると言うことは、ほぼ毎日美和先輩に言い訳をしなくちゃいけないという事で……。
言い訳も底をついてきた。もうこれ以上は騙せない。
それに、やっぱり美和先輩には話しておくべきだと思い、幸い課長も今日は外出だったため一緒にランチすることにした。

「何か話しあるんでしょ、百花」

おぉ…バレてるっ。
そんなに挙動不審だったのかなぁ……。

「あ、あのですね、先輩……」

言いにくいよなぁ。だって先輩も課長のファンなんだもん。
お弁当のことカミングアウトして、怒っちゃわないか心配だよ。
下を向きなかなか言い出せずにいると、美和先輩の口から意外な言葉が飛び出してきた。

「課長のこと?」

「えっ?」

私が驚いて固まっていると、クスクスと笑ってサンドイッチを食べだす。

「目の前の席に座ってるんだよ。ここ最近百花の視線の先が、課長に向いてるのに気づかないはずないでしょ」

なんだ、気づいてたんだ。気づいてて、私の嘘に付き合ってくれてたんだ。

「美和先輩、大好き」

そう言って頭を下げると、また笑い出した。

< 60 / 314 >

この作品をシェア

pagetop