美味しい時間
なんの会話もなく資料室に到着すると課長はキョロキョロと辺りを見回し、急いで鍵を開けたかと思うと私の腕を掴んで中に押し込んだ。
バタンと大きな音を立てて扉が閉まる。
暗い部屋の中、課長が近づいてくる気配を感じ、思わず課長の身体を押し退けてしまう。
「おいっ、何勘違いしてんだよ、まったく……」
少し怒ったようにそう言うと、壁に身体を押し付けられてしまった。
何をしようとしてるのかさっぱり分からず、怖くなって目を瞑ると、コツンとおでこに何か固いものが当たる。
ゆっくり目を開く。少しこの暗闇に慣れてきた目が映しだしたのは……。
「わぁっ、近っ!!!」
課長の顔が、あと数センチでぶつかるほど近くにあった。
おでこにおでこを当ててる?
何でそんなことしてるんだろう……。
「お前、熱あるじゃんか。気づいてないの?」
「え? 嘘……」
「真っ赤な顔してフロアに入ってくるからさ。驚いたよ」
全く気づかなかった。
だからサンドイッチ食べれなかったんだ……。
でもそう言われれば、身体、熱いかも。急に頭がクラクラして、身体がぐらりと傾きそうになる。
それを課長が、透かさず抱きとめてくれた。