美味しい時間

「えっ? ね、寝てましたけど……」

「どこで?」

あ……。

「ベッド使った形跡がないんだけど」

さすがは課長、すごい洞察力。って、感心してる場合じゃないか。
それにその声、怖いんですけど……。

「あはははは……」と作り笑いをしながら、ゆっくり布団に入る。
そして頭まですっぽりと布団をかぶった。

「何ごまかしてんだよっ」

「だって課長、怖いんだもん」

「課長じゃないって言ってんだろっ!!」

心配してくれてるんだと思うけど、そんな怒った言い方しなくても良いじゃん。
身体は辛いし、なんか悲しくなってくるし、涙が出てきちゃったよ。
布団の中でぐじゅぐじゅ鼻を鳴らしていると、バサッと布団を捲られた。
泣き顔を見られたくなくて、両手で顔を覆う。

「なんで泣いてるの……」

はぁ~と溜息をつき、呆れた声を出した。
私はどう答えたらいいか分からなくなって、手はそのまま横を向いた。
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