美味しい時間
しばらくしてギギッとベッドが軋んだかと思うと、突然後ろから抱きすくめられた。
驚きで見を固くする。一瞬で涙が止まってしまった。
耳の下あたりに顔を近づけると、優しく囁いた。
「ごめん。言い方がきつかったな」
声は出さずに首だけ横に降る。
「百花の身体、熱い。なのに寒いってことは、熱上がってるな」
抱きしめられている背中に課長の鼓動が伝わってきた。
あれ? 課長もドキドキしてる?
そのドキドキに重なるみたいに、私の鼓動も早くなっていった。
「このまま抱いててやるから、もう少し寝ろ」
コクンコクンと頷いて、身体の力を少しだけ抜いた。
それに気づいた課長がふっと笑う。
私、こんな状態で寝れるかなぁ。
ドキドキがなかなか治まらないんだけど……。
しばらくはそんなことを考えていたけれど、次第に課長のぬくもりが気持ち良さを誘い、私をゆっくりと深い眠りに導いていった。