美味しい時間
これは何の匂い? すごく美味しそうな匂いがするんだけど。
何か急にお腹がすいてきちゃった。
そう思うとパチっと目を開き、まだボーッとしている頭を三回ほど振る。
段々目もはっきりしてきて、ここが自分の部屋だと認識した。
そっか……課長に抱いてもらいながら寝たんだっけ。あんなに安心して眠れたのは久しぶり。思い出すだけで幸せな気分になっちゃうよ。
あれ? 課長は?
慌てて起き上がりキョロキョロしていると、キッチンで音がした。
「慶太郎さん?」
そう呼びかけると、キッチンの奥から課長がひょこっと顔を出す。
「百花、起きた?」
タオルで手を拭きながら近寄ってきて、ベッドに腰掛けた。
私の額に手を当てると、うん? と少し何かを考えてるような顔をしてからニッコリと微笑んだ。
「熱、少し下がったみたいだな。ちゃんと体温計で計るか」
テーブルから体温計を取ると、私の口元に持ってくる。
「ほら、口開けて」
はっ? そんな、課長の目の前でアホみたいに口、開けられないよ。
「自分で」と、手を出して体温計を受け取ろうと思ったら、ペチッと手を弾かれてしまった。