美味しい時間
「あれは……」
課長にしては珍しく口ごもる。
言いにくそうに、頭を小さく掻きながら私を見つめた。
「残業しなきゃいけないくらい仕事を与えて、お前といる時間増やしたかったんだよ」
「はぁ?」
一体どういうことなんだろう。
私といる時間、増やしたい……?
あっ。よく思い出してみると、残業はほとんど2人っきりだったような気がする。でもあの時の私は課長のことが嫌いで、早く帰ることばかり考えていた。
課長も課長で、交わす言葉は一言二言。私を気にしてる素振りなんて、これっぽっちもなかったじゃないっ。
少し呆れて課長の顔を除き見れば照れているのか、すぐに横を向いてしまった。
「やっぱり子供みたい」
そう言ってクスクス笑うと急にこっちに向き直り、私をベッドに押し倒してゆっくりとその上にのし掛かかってきた。
熱を帯びた眼差しが私を捕らえる。
「俺を子供扱いするなんて、結構な余裕だよな。もう我慢しなくていいか?百花、お前が愛しくてたまらない」
私の頬を優しくなぞる。その行為に私はゾクリと身体を震わせた。