美味しい時間
課長の顔が近づいてくる。どうしたらいいか分からなくて目を瞑った。
「百花が好きだ。愛してる」
もしかしたらと思っていた事をそう言葉で伝えられて反応に困っていると、指先が顎に触れた。
「これでも俺の言うことが信じられない?」
抵抗する間もなく唇が重ねられてしまう。
この前の軽く触れるだけのキスとは違う、触れ合っているところから、課長の想いが伝わってくるような熱いキス。
それは一度では許してもらえず、何度も向きを変えながら口付けられて……。
いつ息していいのか分からなくて苦しくなってきた。
薄く目を開き、首を少し振って息苦しさを訴えると、苦笑してからゆっくり唇を離した。
「そんな顔するなよ」
髪を優しく撫でる。
「慶太郎さん」
「うん?」
「私も慶太郎さんが……」
「俺が?」
「す……好き?」
「なんで疑問形」
そう言って大きな声で笑い出すと、私をギュッと抱きしめた。