美味しい時間

「お前、病人だったんだよな。悪い」

頭を掻きながらそう言うと起き上がり、キッチンへと向かった。
課長の姿が見えなくなると、そっと指先で唇に触れてみる。そして小さな声で呟いた。

「私も愛してる……」

直接はまだ言えそうにないその言葉を、心に刻みつける。

しばらくの間、嬉しさから布団の中で身悶えていると、キッチンから課長の呼ぶ声が聞こえた。

「夕飯の支度できたけど、食べれそうか?」

「えっ?」

この匂い。課長がご飯作ってくれてたんだっ!
飛び上がるほど嬉しくて、大きな声で答えた。

「はいっ、食べれます」

パジャマのまま小走りで、課長の元へと向かった。
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