その両手の有意義な使い方
第七話 … 嘘はひとつ
駅と大学の丁度中間地点。
商店街の隅っこにある喫茶店『新倉敷』はシンプルな内装の地味な店だ。
学生街にあるのに学生受けをうたわず、いつも空いている。
そんな地味な店構えが気に入って、文佳たちは好く入り浸っている。
紅茶一杯で一時間二時間。
歓迎されざる常連客だった。
目の前に置かれた紅茶に、勝手に角砂糖が落とされる。
ひとつ。
ふたつ。
みっつめで、とうとう文佳は穂波の手を遮った。
「糖尿になっちゃうわよ」
「砂糖は元気になるんだよ」
みっつめの角砂糖を手のひらで遊ばせて、穂波が主張する。
「限度があるでしょ。限度が」
軽くにらんで、しぶしぶ紅茶をかきまぜる。
拡散させるのと沈殿させるのは、どちらが賢明か。
スプーンをひと回しした時点で、ふと考える。
我ながら呑気だ。
「別に、あんたたちがくっつこうが別れようが、どちらでも構わないんだけどね」
すました顔でコーヒーを啜り、あやせが切り出した。
「せっかくの観覧最前列なら、協力の代わりに情報開示をして欲しいものね」
「くちわるーい」
からかうように、穂波がくちずさむ。
心配、されている。
それは結構、嬉しいかもしれない。
商店街の隅っこにある喫茶店『新倉敷』はシンプルな内装の地味な店だ。
学生街にあるのに学生受けをうたわず、いつも空いている。
そんな地味な店構えが気に入って、文佳たちは好く入り浸っている。
紅茶一杯で一時間二時間。
歓迎されざる常連客だった。
目の前に置かれた紅茶に、勝手に角砂糖が落とされる。
ひとつ。
ふたつ。
みっつめで、とうとう文佳は穂波の手を遮った。
「糖尿になっちゃうわよ」
「砂糖は元気になるんだよ」
みっつめの角砂糖を手のひらで遊ばせて、穂波が主張する。
「限度があるでしょ。限度が」
軽くにらんで、しぶしぶ紅茶をかきまぜる。
拡散させるのと沈殿させるのは、どちらが賢明か。
スプーンをひと回しした時点で、ふと考える。
我ながら呑気だ。
「別に、あんたたちがくっつこうが別れようが、どちらでも構わないんだけどね」
すました顔でコーヒーを啜り、あやせが切り出した。
「せっかくの観覧最前列なら、協力の代わりに情報開示をして欲しいものね」
「くちわるーい」
からかうように、穂波がくちずさむ。
心配、されている。
それは結構、嬉しいかもしれない。