その両手の有意義な使い方
第八話 … 選択肢はふたつ
どこに行くとも云わないで、高遠は駅へ歩いていく。

ポケットに手を突っ込んで、時折振り返って丸い視線を合わせる。

それでかろうじて、文佳に怒っているわけではないとわかる。
嘘の後ろめたさを抱えた文佳には、ほっとする笑みだ。

でも、高遠の目的はわからないまま。

駅の改札で、さすがに文佳は高遠を呼び止めた。

「どこに行くの?」

「スイカ、持っている?」

思わずうなずいたが、これではQ&Aになっていない。

もう一度声をあげようとしたらすでに、高遠の背中は改札のなかだった。

「ちょっと!」

慌ててバッグから定期入れを引きずり出し、後を追う。

丁度ホームに滑り込んできた電車に、慌ててふたりで乗り込んだ。

線路が覗ける窓ぎわの立ち位置を確保して初めて、自分がいつもの帰宅路線に乗っていることに気付く。

「本当に、どこに行くつもりなの?」

不審と不機嫌が半分ずつ。

眉をひそめて訊いた文佳に、高遠はいたずらぽく片目をつむった。

「AとB、ふたつプランがあるんだけど」
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