その両手の有意義な使い方
科学実験に近いくらい丁寧に淹れた紅茶のカップを両手に持つ。

右手は文佳お気に入りの和風カップ。すべすべした白地に、粗いタッチで判別不明な花が描かれている。

左手には、カフェラテのキャンペーンで勝手に付いてきたマグ。粉末をお湯で溶かすものだったけれど、甘ったるくて一口飲んで箱ごと捨てた。

腹立たしくてカップも捨ててやろうかと思ったけれど、不憫に思えて棚の奥底にしまい込んでいたのだ。

ちぐはぐなカップの左を高遠に手渡して、ちょっと距離を置いて床に座り込む。

膝を曲げる動きさえ、がちがちとぎこちない。
息がつまる。

床にカップを置いて、文佳は深い溜め息をはいた。

「緊張してる? 自分の部屋なのに」

高遠が笑う。
珍しく、少しだけひねた響きを含んでいた。
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