遠い窓
「あ、はじめまして、石田学人です。」

男は、僕を見たとたんだらしなく顔を緩ませてそう言った。

「私の息子だよ。」

石田さんは付け足すようにそう言った。

「む、息子さんがいるなんて聞いてません……!」

口をついた言葉は、恐らくテーブルでバウンドした。
そしてそれは、軌道がずれてそのまま床に落ちた。

「伝わってなかったのかな……?」

石田さんはあくまで落ち着いた声色でそう問いかけた。
視線がするりと母さんへと移るのがわかる。

「悠くんは、兄弟ができるのが嫌なのかな?」

石田さんは、本当に優しい人だろう。
だけど本当に賢い人であるのも確かだ。
質問に対して、逃げ道を作ってくれない。
暗に再婚に対して、賛成なのか反対なのかを聞いてくる。

そんなのずるいだろ。

「……。」

「悠くん?」

母さんからの視線が痛い。
石田さんの声に諭されているような気になる。

何だこれ、泣きそうだ。
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