おっさんと女子高生
「嬢ちゃん、泊まってくのか?」
とりあえず声をかけてみるが反応はなかった。
「俺のメシは?」
テーブルの上を見ると、ちゃんと野菜炒めらしきものがのっていたので、そのまま彼女を寝かせてやることにした。
彼女は俺の知らないうちに来て、俺の知らないうちに帰っていく。泊まることが多いが、朝方には家を出る。朝飯はちゃんと作ってくれる。
布団は幸い二式あったので、某漫画の青いタヌキとメガネのように、部屋に敷く方と押し入れに敷く方とで分けている。俺は青いタヌキと同じだ。
いつの間にか嬢ちゃんは勝手に俺の風呂場に自分のシャンプーを置き、歯ブラシを洗面所に置いていた。
風呂あがりは勝手に俺のジャージを裾を折って着ていた。
図々しいを飛び越えて気にならないレベルだった。
「嬢ちゃん」
布団覆われている彼女があまりにも静かだから、気になって呼びかけた。返事はない。
忍び足で枕元に近寄って、かけ布団をそっと持ち上げてみた。
…………そしてまた、彼女の頭の上にかけた。
クサイものに蓋をするとは、まさにこういうことなのか。
これで俺は、彼女の濡れた睫毛のワケを尋ねなくてもよいことになった。
だから俺は駄目なんだ。いつまでたっても結婚できない。泣いてる女の慰め方なんて、そんなもん知らねーよ。