おっさんと女子高生
「こんなに一緒に過ごしてきたのに私達まだ“赤の他人”なんだよ」
「どういうことだ」
少し刺々しく吐き捨てるように言う。
コイツ、まだそんなこと言ってやがるのか。
「だってお互いに名前を知らないんだよ」
「――――あぁ!」
おっさん。お嬢ちゃん。
名前も知らなくても特に困る事がなかったから気にならなかった。
「あー、エート、ハジメマシテ」
どう反応していいかわからず第一声がそれだった。
彼女はそれを馬鹿にしたように鼻で笑い、ハジメマシテか、と呟いた。
「未来の旦那さんになるかもしれない人を“おっさん”って呼ぶのは可哀想だから、名前で呼んであげてもいいよ」
少しだけ、本当に少しだけ――四年後がみえた気がした。
―――完―――