おっさんと女子高生

「お疲れーっす」
「げ、タク!」

事務所の入り口で声をかけられた。茶髪の頭に白いタオルを巻いた、まだ20代の男。チャラい。

「オレ、この前先輩の家いったんっすよ」
意味ありげなニヤニヤとしたタクの笑いを見て、あ!と思わず声をあげた。

「タク……てめぇだな。社長にホラ吹いたのは……」
「あれ?オレが見たのは紛れもなく真実っすよ。写メ撮りましたから」

ブルーの折り畳み式のケータイを取り出して、数秒ポチポチとボタンを押したあとに画面を俺に見せてくる。
制服を着た少女が、まさに俺の部屋に入ろうとしている瞬間をとらえていた。

「それは、その、違うんだ」
「先輩、実はロリコンだったんっすね。オレと仲間じゃん」
「はぁっ?」

誤解に焦っていることと、タクの衝撃的告白に目を皿にする。
そんな俺を気にせずに、タクは急に真剣な顔つきになり、神妙に話し出した。

「この子、一時間いくらっすか」
「バカいえっ!そんなんじゃねぇ」
タクを軽く殴り、背を向けてその場を去る。

「そんなんじゃなかったら、なんなんっすか」
「ただのトモダチだよ」
背中で受けたタクの質問に、でかい声でそう返答した。

正直、トモダチなんてしっくりこない。かといって恋人でもない。知り合い程度のものじゃない。
妙な関係に今までにない腹立たしさと焦りを感じた。
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