おっさんと女子高生
「おかえりなさい、あ・な・た。ご飯にする?お風呂にする?それと……も……!」
ドアを開けると上機嫌な彼女が初めて出迎えてくれた。普段はしないエプロンを着けて。
彼女にとって年に一度あるかないかの笑顔だった。と言っても、俺はまだ一年も彼女と過ごしてないのだが。
新妻の定番のセリフを口にするお茶目っぷりは、正直俺をドン引きさせた。普段の可愛いげのない彼女からは想像できない振る舞いだ。
そしてなぜ、よりによって今日、タイミング悪くそれをやってしまったのだろう。
「先輩、彼女じゃないって言ってるから変だと思ってたら……奥さんっすか!」
「いや、あれはアイツなりの冗談というか……」
タクの姿を見て赤面して逃げて行った彼女を追って中に入る。押し入れが閉まる音がしたので、きっとその中に隠れたのだろう。
「あいつは俺の後輩だよ」
押し入れの中に話かけるが、中に敷いてある布団のごそごそという音以外に返事はない。
「わー、ハヤシライス!ハヤシライス!」
「ガキかてめぇは……」
人ん家の台所に置いてある鍋の蓋をかってにあけたタクは、彼女が今日作ったのであろうハヤシライスを見て興奮している。