おっさんと女子高生
「おっさん、なんなのあのチャラ男」
台所のタクに聞こえないよう、そう小声で尋ねてくる。
「勝手に着いてきた」
「ふざけんなよクソ親父」
「おい。ここは俺の家だ」
「チビちゃん!温めていーい?てか温めちゃう!」
台所でタクがコンロに火をつけたらしい。すぐ後に、ヤベ、換気扇!と慌てている声も聞こえてきた。
「なんなの?“チビちゃん”ってまさか私のことなの?馬鹿にしてるの?レディに向かって失礼だ」
半ばキレ気味にぶつくさと文句を言っている。どうやら押し入れから出るつもりはないらしい。
「嬢ちゃん、ちょっと彼奴と会ってくれよ。誤解をとくためだ」
「なんで」
「タクの奴、お前さんを俺の彼女だと思ってるんだ。何とか言ってくれねぇか?」
「いいよ別におっさんの彼女でも妻でもなんでも」
「良かねぇよ。たぶん、嬢ちゃんと会うまで帰らねぇつもりだ」
チッと舌打ちしてから、ソロリと押し入れから彼女が這い出てきた。
「二人とも!ハヤシライスの用意できてるっすよ!」
いつの間にやらタクはテーブルにハヤシライス三人前を用意していた。タクは真ん中に置いてある皿の前に座り、期待を込めた目をして俺を見つめている。