おっさんと女子高生
暗めの赤色のリボンをだらしなく着けて、手に持ったおにぎりを頬張っていた。うつむきかげんで顔はよく見えない。
ジロジロ見ていては通報されかねないので、横目でチラリと見てすぐに店の中に入った。
あの制服は確か、ここからすぐ近くにある高校のヤツだ。超進学校までとは言わないが、悪い噂は聞かず、この辺りでは頭の良い部類に入る学校だ。
そんな学校の生徒がこんな夜中に何してんだ。パッと見た感じ“ギャル”ぽっくなく、髪も染めてないごく普通の子だった。
………いいや、ああいう真面目な子ほど裏で何かやってるもんだ。変なおっさんと待ち合わせでもしてるんじゃねーのか?
まぁ、関わらないのが一番だ。事件に巻き込まれちゃ困るからな。
ビールと売れ残っていた弁当を引っ付かんでレジに置いた。
「568円です。温めますか?」
「あー……お願いします」
ポケットの中の小銭を掴んで、それを取り出した。手のひらの小銭をみて驚愕した。四百円しかなかった。
レンジに弁当を入れて戻ってきたにーちゃんが不審そうに俺を見る。
「ちょっと待ってくれ」
五百円玉を取り出すのを忘れたんだ。もう一度ポケットに手を入れて中を探るが、それらしきものが無い。
にーちゃんは温め終わった弁当を袋に入れ、そこにビールを入れていた。
おいバカ。ビール買うのやめるって言いにくいじゃねーか。
しかしどうして五百円玉がないんだ!あの感触は確かに五百円だったぞ!
「………六百円ですね。お釣りです」
あたふたしていた俺に、にーちゃんが32円を差し出した。
「お、おう」
日々頑張っている俺へのサービスか?と思ったが、そんなことはなかった。足りない二百円をにーちゃんに差し出す小さな手。ポケットに受け取った小銭を入れながら、視界の隅に映った手の存在を思い出した。