おっさんと女子高生

「私を騙したな!」
「おいおい。何のことだかちんぷんかんぷんだ」
「あの夜……あんなに誓いあったのに!」
「そんな夜は俺には覚えがねぇぞ」
「………私も覚えがないけど」

ああよかった。ただの冗談じゃねぇか。こいつの冗談は本気との境目が解りづらくて困る。

「一分以上鳴ってたから、重要な話だったらおっさんが困るかなと思って」
「ん、わかった。で?ゆりこはなんだって?」
「“ん~、アンタ私がいなくてもちゃんと食べてるぅ?最近連絡くれないんだもん、心配なのよぉ。アンタが全然出ないから休み時間終わりそうじゃない!メイク直ししなきゃいけないから、じゃあねっ”」

まるで機械が読み上げたようにスラスラと無機質に話す。無表情な顔に少し恐怖を覚えて、生唾をのみこんで彼女の先に続く言葉を待った。

「以上、一方的にしゃべって切れました。OL風の彼女は誰なの?まさか浮気相手なの?」

腕組みする彼女からは不機嫌オーラがびしびし感じられる。鬼嫁にいびられる夫ってこんな心境なのだろうか。
だいたい、俺たち夫婦でもなんでもないのになんでこんなことに…。
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