おっさんと女子高生
ハッとして横を向くと、一人の客が店を出ていき、自動ドアが閉じたところだった。
俺は袋を掴んで慌ててその後ろを追いかける。
「おい、嬢ちゃん」
少女の手首を捕まえた。彼女は驚くことなく黒目がちな目を俺に向ける。
「おじさん、お金持ってなさそうにみえたから……」
それだけ言って手を振り払おうとしたので、俺は慌てて手首を握りなおした。
「待てよ。ホラ、二百円、返さなきゃなんねーだろ?家近くなのか」
「いいよ二百円ぐらい」
「女子高生に奢ってもらうとか、俺のメンツ丸潰れなんだよ!」
「おっさんのメンツとか、私に関係ない」
冷たい目した彼女は言い返そうとする俺を置いて暗闇に消えようとしていた。
電灯のない暗い道を歩く彼女の背中を目で追っていると、鼻の頭に水滴が落ちた。
そう言えば雨の匂いがしていたっけな。
本降りになりそうで、どうしたものかと思っていると、赤色の折り畳み傘をさした彼女が戻ってきた。
彼女は腕を伸ばして俺を傘の下に入れながら言った。
「おっさん、傘持ってなさそうにみえたから…」
「……親切なのか失礼なのかわかんねぇヤツだな」
「美少女なのは確かだけどね」
「自分で言うな。……で、送ってやるよ。家は?」
「……………公園」
「なんだ家出か?若いねぇ、青春だねぇ」
「黙れよクソオヤジ」
「警察につき出すぞ」
「いいよ。このおじさんに誘拐されましたって言うから」
「チッ、これだからゆとりはダメなんだ。俺が叩き直してやる!来い」
「えっ、おっさんの家行っていいの?ラッキー」
とまぁ、そんなこんなで、俺は赤の他人の女子高生を自分の家に上げた。
言っておくが、俺は逮捕されるようなことは断じてしていない。誓っていかがわしいことはしていない。
とりあえず、これがアイツと俺との出会いとかいうやつだ。