おっさんと女子高生
アパートの階段をカンカン音をたてて登っていくと、例の女子高生が俺の部屋のドアの前で座り込んでいるのが見えた。
コンビニでの事件があってしばらくだが、彼女はこうして俺を訪ねてくることが多くなった。
ちなみに今日は平日の昼間。昨日の夜からのトラックの仕事がさっき終わって、ようやく家に帰ってきたのだった。
「嬢ちゃん、学校はどうした」
彼女は俺をチラッと見て立ち上がり、制服のスカートについたホコリを手ではらう。
床には食材が入っているらしいスーパーの袋が置いてある。
「留年するぞ」
「ノープロブレム」
あのなぁ、今どき高校ぐらい出とかないと働き口が見つかんねぇぞ。
そうブツブツ呟きながら鍵穴に鍵を差し込みドアを開けた。俺が入る前に彼女は遠慮なしに足を踏み入れる。
「相変わらず汚い」
「うるせー」
畳の上にはめったに干さない布団やら、脱ぎ捨てられた服やら、その他モロモロ散らばっている。
しょうがない。男の独り暮らしなんてこんなもんだ。
「おっ、メシか?」
「おっさん、昼ごはんまだでしょ」
台所に立った彼女はスーパーの袋から食材を取り出し、何やら作りにかかっていた。
別に頼んでいたわけじゃないが、彼女はこうしてメシを作ってくれる。
彼女が買ってきた食材の費用を渡そうとしたが、断固として受け取らなかった。だから今は“アルバイト”として俺のメシ作りを頼み、しかるべき金を払うようにしている。
彼女にどういう事情があるか知らねぇが、こうした正当な目的がある方が俺のところに来やすいと思ったからだ。
俺は深夜にひとりでコンビニに来る女子高生を放っとけるような薄情な奴じゃねえ。
警察に見つかったら説明に困るだろうが、やましいことは何もしてないんだ。
だいたい俺はロリコンじゃない。ムッチリしたお姉さんがタイプだ。アイツのことだって妹ぐらいにしか思ってないから、まぁ、ノープロブレムだ。
仕事着を脱いでパンツ一丁になり、布団の上に倒れこんだ。台所からはフライパンで何かが焼かれている音がする。
実家に戻ったみたいだ。彼女がいたらこんなんなのかな。