バイオレンス・ダーリン!?

「うーん、やっぱり面白いことになってきたなー」

「瀬戸口、せめて本音は隠そうよ」


 慎吾は首だけで花那を振り返り言った。とりあえず言っておこうか的な適当さで。


「そうは言われても、これがなかなか。
……ん?」


 やけにギャラリーが静かだ。

 さっきまでどこのコンサート会場だってくらいキャーキャー言っていたのが、どよめきとさわさわと衣ずれの音がさざ波のように広がっていく。

 ちょうど、長身の慎吾で陰になっている辺り。ひしめき合っていた女子と乙女系男子の群衆が左右に割れる。


「沖。先輩の不在だからっていつまでサボってる」


 とびきり厳しい声が飛ぶ。
 いかにもエラそうで、無駄に態度のデカさがにじんだ声は、声変わり前の少年のもののように高い。

 慎吾スカウトに夢中だった沖は、ぎくりと全身をこわばらせてギギギと声の主を振り返る。
 花那と波月もつられて見てみるが、慎吾や、乙女系男子に隠れてしまって、その姿を確認することが出来ない。

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