バイオレンス・ダーリン!?

 そんなふざけたことほざくのはどこのどいつだ? と慎吾の肩に手を置いて、ひょいと背伸びしてのぞき込む花那。

 至近距離にいる慎吾は、男のくせにやけにいい匂いがする。
 しかし花那はそんなこと思う間もなく、眼前の光景に固まった。ぶしつけに、一人の人物を指さしながら絶叫。


「ああぁーーーっ!!!」


 周囲が軒並み何事かといった視線を花那に投げかける。

 耳元で叫ばれた慎吾と、花那の行動に顔色を変えた波月だけは別として。


「うー……耳、キーンって言ってる……」

「ちょっ、オイコラ! 何勝手に密着してるんだっ!」

「それどころじゃないんだってば! あれ! あの人!」


 必死になって指差す先に、例の、ちっさいくせに態度のでかいバスケ部員。

 髪と目の色素の薄さが西洋的な、ベリーショートが良く似合う美人顔……花那が言うところの、ジャージ美人がそこにいる。

< 30 / 32 >

この作品をシェア

pagetop