悪魔の熱情リブレット

「アンドラス、一日だけでも良いですから来て下さい。シルヴェスターもいかがです?」

普通、宴が始まると主催した悪魔が飽きるまで続く。

過去最長記録は三百年くらいだったろうか。

暖炉の準備を終えたシルヴェスターがサリエルの誘いに、どうしたものかと主の指示を仰ぐ。

「ダメだよ。シルヴェスターはティアナのママだからね。ここに残ってもらう」

全ての悪魔が呼ばれたと言っても絶対参加は上級悪魔達だけだ。

シルヴェスターのような部下は嫌なら来なくても良いのだが、地獄の最高権力者主催の宴に来ない悪魔はほとんどいない。

「では自分は残りますので、主よ、いってらっしゃいませ」

「行きたくないよ。面倒臭い」

と言いつつも逃げれないことはわかっているので仮面を被り仕度するアンドラス。

「一日だけだからね」

サリエルに念を押しながら外に出て行こうとする彼に、ティアナは怖ず怖ずと言った。

「あ、アンドラス…!あのね…いってらっしゃい!」

見送りの挨拶にカラスの仮面が振り向く。

「行ってくる。いい子で待ってるんだよ?ティアナ」

顔は見えずとも優しい声に安心したティアナは、元気良く頷いたのだった。


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