悪魔の熱情リブレット
「あ!アンドラス~!サリエル~!」
可愛い声に呼ばれ辺りを見回すとヴォラクが手を振りながら近づいてきた。
「貴殿も来たのか」
ヴォラクと共にいたオセーもアンドラスを見つけ寄ってくる。
「あれ~?じゃあティアナちゃん独りぼっち~?」
「いや、シルヴェスターを置いてきたから」
ティアナに関してよく嫉妬されてはいるが信頼のおける部下シルヴェスター。
彼に任せておけばティアナの生活は問題ないだろう。
「でも僕はすぐ帰るからね。ここはうるさくて落ち着かない」
アンドラスが広間で騒がしく暴れている悪魔達を忌ま忌ましげに睨む。
すると、聞き知った声が耳に入った。
「お~?アンドラス、お嬢ちゃん置き去りで自分だけ楽しみに来たのか~?」
振り向くと、すでに酒で酔って真っ赤になっているバシンがいた。
「だ、か、ら!すぐにでも帰るって言ってるじゃないか!!」
「うん?そうかそうか~!賢明だな!」
怒ったアンドラスの肩にバシンは腕を回し囁いた。
「お嬢ちゃんが気掛かりだ。目、離すなよ」
酔っ払いの表情から真剣な眼差しに変わる。
バシンの言葉に含みを感じたアンドラスは、仮面の下で厳しい顔をして頷いたのだった。