悪魔の熱情リブレット



 アンドラスが地獄に行ってからティアナはシルヴェスターと二人、居間でゆっくりしていた。

大分部屋も暖まったため、包まっていた毛布を膝にかけ読書の時間に入るティアナ。

彼女の邪魔をしてはいけないと静かに控えていたシルヴェスターだったが、薪が足りなくなっているのを見つけ居間から出て行ってしまった。

居間で一人になっても、ティアナは何も心配せずに本を読んでいた。

難しい単語もオセーの教育のおかげですらすら読める。

ページをめくろうとした時、暖炉の火が勢い良く爆ぜた。

その音にびくりとし、炎を見つめる。


――ティ…



「あ、れ…?」

今、暖炉の炎が揺らめいた瞬間に声が聞こえた。



――ティ…ナ



女性のような高い声。

ティアナは引き寄せられるように暖炉に近づいた。



――ティアナ…



はっきりと声が聞こえる。

「私を…呼んで、る…?」

見えない何かに操られたように少女は虚ろな瞳で手を伸ばした。


炎の中に。


< 105 / 308 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop