悪魔の熱情リブレット
アンドラスが地獄に行ってからティアナはシルヴェスターと二人、居間でゆっくりしていた。
大分部屋も暖まったため、包まっていた毛布を膝にかけ読書の時間に入るティアナ。
彼女の邪魔をしてはいけないと静かに控えていたシルヴェスターだったが、薪が足りなくなっているのを見つけ居間から出て行ってしまった。
居間で一人になっても、ティアナは何も心配せずに本を読んでいた。
難しい単語もオセーの教育のおかげですらすら読める。
ページをめくろうとした時、暖炉の火が勢い良く爆ぜた。
その音にびくりとし、炎を見つめる。
――ティ…
「あ、れ…?」
今、暖炉の炎が揺らめいた瞬間に声が聞こえた。
――ティ…ナ
女性のような高い声。
ティアナは引き寄せられるように暖炉に近づいた。
――ティアナ…
はっきりと声が聞こえる。
「私を…呼んで、る…?」
見えない何かに操られたように少女は虚ろな瞳で手を伸ばした。
炎の中に。