悪魔の熱情リブレット
恐ろしくも甘い声音を吐きながらルシファーは炎の中を進んだ。
「でも、なんで私を…?」
こんな見ず知らずの悪魔に目をつけられた理由がわからず疑問を口にする。
「お前は私の声を覚えていないか?」
「声?」
「一度、お前の意識に入り込んだ。まあ、その時は破壊の悪魔に邪魔されたがな」
数年前の記憶が甦る。
ティアナが風邪をひいた時入り込んできた悪魔。
「あ!あの真っ黒な声!」
「また来る」と言って消えたあの恐ろしい声が約束を実行したのだ。
最も、ティアナが来る立場になってしまったが。
「お前には礼がしたくてな。今回はそのために宴を開いたのだ。存分に楽しめ」
(礼…?)
また一つ疑問が増えたティアナ。
「着いたぞ。ここだ」
炎の渦を抜け、いつの間にか彼らはパンデモニウムに到着していた。
黄金に輝く魔殿。
それにはティアナの視線を釘付けにする十分な迫力があった。
ゴモリーの姿のティアナはルシファーに抱えられ、正面の入り口をくぐり抜けて広間へと入ったのだった。